青々とした葉を繁らせる夏の木、紅葉し鮮烈な色彩を放つ秋の木もそれぞれにいい。だが深々と雪が降る雪原に雪衣をまといたたずむ冬の 樹にどうしても心が引かれるのはなぜだろうか。ところで最近、十勝岳温泉附近でいい場所を見つけた。車道から深雪をかき分けて行くと実 に心温む空間なのである。深夜訪れると暗闇から木々が妖しく無気味に迫ってくるのだが、朝、陽光を受けると雪の結晶が輝き、幼い頃耳に したアイヌ民話に登場する木の精が乱舞しているような感覚を覚える。しかし冬山の天気は変りやすく彼女達はすぐ姿を消し、またもとの無 彩色の世界にもどってしまった。この静かな景観も実に心が温む。 |